ただ、似たような印象を受けた他の作品と比べると作品全体の方向性、雰囲気作りが上手く、またそれに合わせた絵が素晴らしいため、絵を楽しむという点ではこの作品ならではの良さがあると感じましたね。
1つの作品としてはそこそこ満足しましたが、1つの物語としては残念な出来でしょう。
それは絵と音関連(歌・BGM・声)が良くて、シナリオがいまいちだからということに尽きます。
そのシナリオですが、とにもかくにも半ばから唐突過ぎる展開なのが一番不味い。
いきなりくっついたりするケースがとにかく多く、そしてちょっとHシーンを挟んでそのままED、この流ればかりはいただけないです。
ほぼ全員元々主人公に好感を抱いているとはいえ、本編でなされる会話量が少ない分違和感はどうしても残りますし、その後のいちゃつきもほとんどないので、シリアスや盛り上げがない分、記憶に残りづらいイベントが少々で物語が終わってしまうのは、物足りないと感じて当然と思います。
ただ、絵の魅せ方、これに限って言えば、どれも決して悪くないと自分は考えています。
正直に言えば、発売された時期が時期だけに、塗りを始めとした単純な質としては突出しているとは言えないでしょう。
だけど、自分はこの作品の絵を大きく評価しています。
特に目を惹いたのは、イベントCGの構図と、それが出るタイミング。
例えばとあるシーンでぐっと引いた構図のイベントCGが出たかと思うと、その直後にヒロインのぐっと迫ったアップのCG。
最初のCGでは複数の人物を引き気味の視点で描いたり、独特の構図で描いたりすることでその場面の状況を解りやすく、柔らかくコミカルなタッチで伝え、その後に出てくるアップのCGでは逆に1人のヒロインをぐっと際立たせてくれる。
このイベントCGを出す構成、タイミングが絶妙。
本作のシナリオが設定の割りに異常に短いという欠点も、この点においては安定しているかつ、比較的短いスパンで様々なCGを見ることが出来るということに貢献しているように見えてきます。
また、特徴の弱いテキストであることが、CGを見る、CGから感じる雰囲気を味わうという点から見れば、逆に邪魔をしていないので良いとも捉えることが出来ました。
他、音楽はOPから作中、そしてEDまで全てにおいて質が良く、雰囲気作りという面でも優秀、テキストのインパクトがさっぱり無いので印象的なシーンこそ無かったものの、安定感は十分過ぎる声。
その全てが、イベントCGを堪能することにおいては、足並みを見事に揃えているように感じられます。
絵が良い、そう感じる作品は、これまでにもたくさんありましたが。イベントCGを見ることが、これほどまでに楽しい、待ち遠しく感じられた作品はほとんどありません。
絵だけのゲーム、そう言われてしまっても仕方が無いかもしれません。だけど、その絵の見せ方については、この作品だけと言えそうな面白さがありました。
だから、最初の言葉に戻ります。
1つの物語としては残念ですが、1つの作品としては満足したと。
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